Grok 4.5とGPT-5.6は、わずか1日違いで相次ぎ公開された。評価は、「エージェント型コーディングで91.9%を叩き出したOpenAI陣営」と、「100万トークン2ドルで価格破壊に挑むSpaceXAI」の二択に割れている。
注目ポイント
- 主要ベンチマークではGPT-5.6 Solが概ね優勢。一方でGrok 4.5は価格・速度・トークン効率で上回る。
- 独立検証ではGrok 4.5は知能指標4位だが、幻覚(ハルシネーション)率は54%と前世代の2倍に悪化。
- ライティングや長尺のコーディングではGPT-5.6、トークン大量消費の低予算案件ではGrok 4.5が選好される傾向。
Grok 4.5 vs GPT-5.6 ベンチマーク比較
SpaceXAIは7月8日にGrok 4.5をリリース。OpenAIは翌日にGPT-5.6を投入し、フラッグシップのSolと、低価格帯のTerra・Lunaを組み合わせたラインアップを打ち出した。ベンチマーク企業Artificial Analysisは、新Grokをインテリジェンス指数54ポイントで4位に位置付け、Claude Fable 5、GPT-5.5、Opus 4.8の背後につけた。
直接対決ではOpenAI優位が色濃い。ある暫定スコアカードでは、GPT-5.6 Solが86ポイント、Grok 4.5が82ポイントと評価され、特にターミナル上でのエージェント型タスクで91.9%対83.3%と差がついた。一方で、コーディング全体の平均スコアは64.7対64.6とほぼ互角だ。
OpenAIは公式発表で、推論を最大設定にしたSolが独立系Coding Agent Indexで過去最高の80ポイントを記録したと主張。Grok 4.5も自社のGrok Build環境では76ポイントを付ける。一方、経済性はGrok側に振れる。入力トークン100万あたりの料金はGrokが2ドル、Solは5ドル。コーディングタスク1本を完遂するコストも、Grokが2.49ドルに対し、Fable 5は11.80ドルに達する。
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コーディング、ライティング、日常タスクの実力
実運用レベルの検証でも、同じ構図が浮かぶ。100超の実在リポジトリ案件を対象にした長期ハーネスでは、Solが63.7%のタスクを再試行なしで完遂したと報告され、複雑で手順の多いチェックリストでもコンテキストを見失いにくかったという。別の独立コーディングテストでは、Solが100点満点中92点、Grok 4.5が87点と採点され、後者はオープンウエイト系の最高水準モデルと肩を並べた。
ライティング分野でも、評価はSol寄りだ。初期ユーザーはSolを、日常的な知的業務の約8割をカバーできる「常用ドライバー」と評しており、スタイルガイドへの忠実さは他モデルより一枚上との声が多い。
これに対し、Grok 4.5は速度と従順さで勝負する。実務案件でGrokを回したレビュアーは、初回ビルドの完成度の高さ、構造化出力の安定性、1秒あたり約80トークンで5秒未満の応答などを報告している。ただし精度面には課題が残る。計測された幻覚率は25%から54%へと悪化した一方、事実ベースの正答率は52%まで改善しており、「速く、よく喋るが、まだ誤答も多い」という評価がつきまとう。
専門家評価と「信頼性」リスク
イーロン・マスクはGrok 4.5を、「Opusクラスの性能を持ちながら、より高速でトークン効率に優れ、低コストなモデル」と売り込む。一部アナリストは、Fable 5がタスクあたり約720万トークンを消費するのに対し、Grok 4.5は約190万トークンで済むことから、スコア差よりも価格差の方が企業にとって重要だと指摘する。
一方で、慎重論も根強い。レビュアーは、初期スコアの多くがベンダー自己申告であったこと、モデルカードが公開されていないこと、そしてCursorのコードベースが誤って学習データに含まれていた疑いから、Cursorが社内ベンチマークの一部を撤回した事実などを問題視している。GPT-5.6側にも課題はあり、OpenAIのシステムカードは、同モデルが前世代よりも指示から逸脱しやすいと認めている。
この新たな対立は、AI業界の激動期に重なった。SpaceXは2月にxAIを吸収し、6月にはCursorを600億ドルで買収。そのうえで、Grok 4.5公開の2日前に研究部門をSpaceXAIへと改称した。OpenAIはというと、Solが6月末まで政府の安全審査で一時「塩漬け」となり、市場投入が遅延。AnthropicのFable 5は依然として公開ベンチマークのトップだが、7月1日に19日ぶりに復帰したばかりだった。






