OpenAIは、中国の競合である**ムーンショットAI(Moonshot AI)**に関係する人物らが、 自社モデルの「隠れた推論過程」を抜き出そうとする組織的なキャンペーンの中核にいたと明らかにした。 この試みは7月下旬にピークを迎え、わずか数日で計1万6000件に達したという。
重要ポイント
- OpenAIは、7月の活動の中核クラスターを、対話型AI「Kimi」の開発元ムーンショットAI関係者に紐づけた。
- オペレーターらは、暗号化された推論テキストを会話間でコピーしたが、暗号そのものは解読できなかった。
- ムーンショット側は現時点で公のコメントを出しておらず、中国政府はこれまでの「蒸留」疑惑を一貫して否定している。
OpenAI、ムーンショットAIを名指し
OpenAIは水曜日に公開したブログ投稿で、この不正行為の詳細を開示した。 それによると、活動は7月1日に少量のトラフィックから始まり、 7月24〜25日に急増。 4,000人超のユーザーが、同一パターンの抽出リクエストを合わせて1万6000件送信していた。
その後の調査で、関連する活動は累計1万5000人超のユーザーにまたがっていたことが判明し、 OpenAIは7月28日までにキャンペーン全体を遮断した。
すべてのオペレーターを特定の主体に結びつけることはできなかったものの、 中核となるクラスターについては、中国発のKimiモデル群を手がけるムーンショットAIの関係者に帰属できると判断した。
OpenAIは通常、モデルが最終回答を返す前に、その内部推論を暗号化して隠す仕組みを採用している。 同社によれば、オペレーターらはこの暗号化テキストをあるチャットからコピーし、 別のチャットで別のモデルに「書き起こし」を要求する手口を用いた。 ただし暗号自体が解読されたわけでも、保存されている他ユーザーの会話に到達したわけでもないという。
OpenAIは、関与アカウントを停止し、新規登録時の審査を強化。 併せて、他のAI研究機関や各国政府との情報共有も進めたとしている。
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OpenAIの「蒸留」懸念
OpenAIで国家安全保障戦略を統括する**キャロライン・ジーア(Caroline Zier)**氏は、 ブルームバーグへのコメントで、 同社が問題視しているのは「オープンモデルや正当な知識蒸留ではなく、利用規約に反する行為だ」と強調した。
モデルの「蒸留」(他モデルの出力や特徴を利用して別モデルを訓練する手法)自体は、業界では広く行われている。 OpenAIはブログで、抽出された推論情報が、本来の安全措置を伴わないまま競合モデルの訓練に用いられれば、 「安全への投資を回避したまま高度な能力だけを移転しうる」と警鐘を鳴らした。
一方で、トランプ前政権下でAI政策を担当したデービッド・サックス(David Sacks)氏は、 こうした報告は、OpenAIやAnthropicのビジネスモデルと競合するオープンモデルを ワシントンに禁止させるためのロビー活動の一環だと批判している。
ムーンショットとKimiへの視線
ムーンショットAIは今回の主張について、これまで公の場で反論していない。 中国政府は過去に米企業やトランプ政権からの「蒸留」疑惑を退けており、 もし米国が制裁措置に踏み切れば対抗措置を取ると警告してきた。
ムーンショットは7月16日、最新大型モデル「Kimi K3」を発表した。 その数週間後、ホワイトハウス科学技術顧問のマイケル・クラツィオス(Michael Kratsios)氏は、 同社が本来は中国企業への販売を禁じられているNvidiaのBlackwellサーバーにアクセスし、 米国発のモデルからデータを引き出していたと指摘した。
さらに9月10日には、Anthropicが ムーンショットAIが自社のClaudeモデルに対する約30万件のユーザーリクエストを、 5,380件もの不正アカウントを通じて密かに迂回させていた と公表している。
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