AI 業界では、成長はまもなくハイエンド GPU の世界的な不足によって制約される、という前提が根強く存在している。
しかし、次の AI 開発フェーズを形作る制約は、絶対的な希少性というより、構造的な非効率性にあるのかもしれない。
Render Network の Trevor Harries-Jones によれば、世界のコンピュート能力の大部分はまったく使われておらず、これは供給制約よりも重要な断絶だという。
誤解された GPU 不足
「世界の GPU の 40% は遊休状態だ」と、彼は Solana の Breakpoint イベントの傍らで Yellow.com のインタビューに答えて語る。 「人々は不足していると考えていますが、実際にはレンダリングや AI ジョブをこなすのに十分な性能を持つ GPU が余っているのです。」
Harries-Jones は、Nvidia の H100 のようなトレーニング用チップへの需要が依然として強い一方で、トレーニングは現実世界の AI ワークロードのごく一部に過ぎないと主張する。
「トレーニングは、AI 利用全体のごく小さな割合にすぎません」と彼は指摘する。「推論が 80% を占めています。」
そのアンバランスさがあるからこそ、コンシューマー向けハードウェアやローエンド GPU、そして LPU・TPU・ASIC といった新しいプロセッサ群が、 多くの人が想定する以上に、世界のコンピュート需要を受け止められる余地が生まれていると彼は示唆する。
彼が強調する第二のシフトは、従来の 3D ワークフローと、新たな AI ネイティブのアセット形式の収束だ。
クリエイターが AI をシネマ級パイプラインへ押し上げる
ガウシアン・スプラッティングのように、つぶれた 2D フレームを生成するのではなく基礎となる 3D 構造を保持する手法や、ワールドモデルの登場は、 AI システムを映画制作のパイプラインに一段と近づけつつある。
こうした発展が重要なのは、AI のアウトプットが既存のプロフェッショナルなツールチェーンの中でそのまま使えるようになり、 単なる独立した「面白フォーマット」にとどまらなくなるからだ。
モデルサイズは依然として課題だが、Harries-Jones は量子化やモデル圧縮が進むことで、 オープンウェイトのシステムがコンシューマーデバイス上でも快適に動作するレベルまで小型化していくと見ている。
彼によれば、小型モデルは、ハイパースケールなクラスターではなく、分散された RAM と帯域幅に依存する分散型ネットワークにとって不可欠だ。
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多くの人がモデルの複雑化によってコスト上昇が進むと予想する一方、彼はむしろ逆のダイナミクスが支配的になると考えている。
スケールより効率を優先した最近の中国発モデルのようなトレーニング手法のブレイクスルーは、 利用が加速するほど AI が安価になっていく未来を指し示している。
「コストが下がれば下がるほど」と彼は言う。「さらに多くのユースケースが次々と生まれてくるでしょう。」
コンピュート不足ではなく、Harries-Jones が予想するのはジェヴォンズのパラドックス的な循環だ。 コスト低下が需要を生み、その需要がさらに効率の高いシステムへのインセンティブをもたらす。
彼はまた、オンデバイス・ローカルネットワーク・集中型クラウドを組み合わせたハイブリッドコンピュートが、 業界の次のステージを特徴づけると見ている。
Apple の分散型インテリジェンスモデルと同様に、レイテンシ、プライバシー、機密性、スケールに応じて、 異なる環境が異なるタスクを処理するようになるだろう。
ミッションクリティカルなワークロードには依然としてコンプライアンスを満たすデータセンターが必要だが、 機密性の低い処理やバッチ処理は、今後ますます分散型ネットワーク上で実行できるようになる。 暗号技術の進歩によって、その境界は将来的にさらに広がる可能性がある。
3D ファーストなコンテンツの波がやってくる
より長期的には、AI によって後押しされた 3D のマスメインストリーム化という、はるかに大きなシフトが進行中だと彼は見ている。
Harries-Jones は、次のコンシューマー向け AI の時代は、テキストや平面画像ではなく、 没入型で 3D ネイティブなコンテンツを中心に展開すると予想している。
「これまで以上に多くの 3D コンテンツを消費するようになるでしょう」と彼は語り、 没入型ハードウェアからの初期シグナルや、3D-AI ツールの急速な進化を指摘する。
これまでモーショングラフィックスのボトルネックとなってきたのは、高度に専門的で、限られたエキスパートだけが扱えるワークフローだった。 だがそれは、何百万人ものユーザーがシネマ級のシーンを制作できるようにするツールに取って代わられるかもしれない。
かつては AI に抵抗感を示していたクリエイターたちも、いまやこれらのパイプラインを自ら試し始めており、 ツール改善のスピードを加速させるとともに、ハイブリッドワークフローの進化の方向性を形作っている。
彼の見立てでは、クリエイターからのフィードバックは、ハードウェアトレンドと同じくらい、 業界の進む方向に影響を与えることになるだろう。
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