TRON（TRX）は、2025年にネットワーク成長で記録的な水準に達した一方で、TRXは過去8年間で最も弱い第4四半期パフォーマンスとなりました。
ネットワークは12月までに合計3億5540万件のアカウントを追加し、日次取引数は880万件超を処理しました。
それにもかかわらず、TRXは第4四半期に16.2％下落し、2017年のトークンローンチ以来最悪の四半期パフォーマンスとなりました。
この乖離は、暗号資産市場における中核的な教訓を示しています。すなわち、ネットワーク採用の拡大が、必ずしも即時の価格上昇を保証するわけではないということです。
何が起きたのか
TRONは2025年8月に、平均ネットワーク手数料を約60％引き下げました。
この手数料引き下げによりステーブルコイン送金が大幅に安くなり、TRONは日次アクティブユーザー数で BNB Chain や Solana（SOL）を抜きました。
現在ネットワークは日次アクティブユーザー数が平均260万人となり、Solanaに次ぐ第2位の水準を維持しています。
TRONは1000ドル未満の小口USDT送金を支配しており、世界シェアは65％に達しています。
CoinDeskのデータによれば、ネットワークは日次のステーブルコイン決済価値で220億ドル超を処理しています。
USDT のTRON上の供給量は800億ドルを超え、流通する全USDTの50％以上を占めています。
しかし、この手数料引き下げにはトレードオフが伴いました。
スーパー・レプレゼンタティブの日次収益は、8月の削減後数日以内に64％減少しました。
TRONは短期的なバリデーター経済性よりも、取引ボリュームとユーティリティを優先しました。
米国商務省は、公式GDPデータのハッシュをオンチェーンで公開する基盤としてTRONを選定し、連邦機関が経済データに公的ブロックチェーンを初めて活用する事例となりました。
この決定は、TRONのスケール、スピード、信頼性が実証されたことを認めるものです。
ネットワーク指標が過去最高に達したにもかかわらず、TRXは第4四半期を通じて主要アルトコインをアンダーパフォームしました。
Bitcoin（BTC）ETFのローンチ、Solanaエコシステムの拡大、Ethereum（ETH）の動向などが市場の注目を集めました。
TRXは12月下旬に0.27ドルで取引されており、四半期を通じて売り圧力が続いたことを反映しています。
なぜ重要なのか
TRONのパフォーマンスは、ファンダメンタルなネットワーク成長とトークン価格が、長期間にわたって乖離し得ることを示しています。
この暗号資産は現在、世界のステーブルコイン決済、とりわけ新興国市場における主要な決済レイヤーとして機能しています。
TRONの日次アクティブユーザーの約74％はウォレット間送金を行っており、この比率はEthereum、Solana、BNB Chainなど主要ブロックチェーンの中で最も高い水準です。
これは、TRONが投機的なトレーディングプラットフォームというより、小売向け決済ネットワークとしての役割を強化するものです。
ネットワークのTotal Value Locked（TVL）は、2025年第3四半期に49億ドルから60億ドルへと増加し、JustLendのようなDeFiプロトコルが牽引しました。
それにもかかわらず、同期間中にTRXを投資資産として捉える市場参加者の関心は限定的でした。
TRONには中央集権化に関する懸念もつきまとっています。
Bloombergの報道によれば、創業者の Justin Sun がTRXトークンの60％超を支配しているとされ、ネットワークの非中央集権性に対する疑問が持ち上がっています。
トークン保有の集中は、機関投資家が通常回避するガバナンスリスクをもたらします。
Sunのエコシステム内でローンチされた他のトークンも、深刻な下落を経験してきました。
TRX自体はICO以来プラスのリターンをもたらしている一方で、BTT、SUN、WINなどのトークンは、過去最高値から95％以上下落しています。
このパターンは、Sun関連プロジェクトに対する投資家の懐疑がTRONそのものを超えて広がっていることを示唆しています。
テクニカルアナリストたちは、TRXが日足ベースで下降ウェッジパターンのブレイクアウトを確認しており、一般的には強気転換に結び付くと指摘しています。
しかし、マクロ経済の不透明感やBitcoin中心の物語への資金ローテーションといった広範な逆風がセンチメントを冷やしています。
TRONのインフラ優位性は、現在の価格の弱さにもかかわらず、ステーブルコイン決済における競争力を支える要因となっています。
ネットワークは2025年に99％という高い取引成功率を示し、Ethereumの97％、BNB Chainの94％、Solanaの86％を上回りました。
変動局面における手数料の安定性は、重要なアドバンテージです。
ステーブルコイン市場が大きく混乱した局面でも、TRONの平均手数料は1トランザクション当たり0.63ドルにとどまりましたが、Ethereumの手数料は15〜30ドルまで急騰しました。
投資家にとってTRONは、ネットワークのファンダメンタルと投機的需要を見分けるケーススタディと言えます。
この暗号資産は利用指標が強いにもかかわらず、既存のプラットフォームと競合する高リスクなアルトコインであり続けています。
機関投資家の採用と規制の明確化が、TRONの決済インフラが2025年以降も持続的なトークン価値上昇へとつながるかどうかを左右する可能性が高いでしょう。