米報道機関グループを代表するニューヨーク・タイムズは11日、オープンAIが7800万件規模の対話データセットを秘匿し、数十億件のChatGPTログを削除したとして、連邦地裁に制裁を科すよう申し立てた。
主な論点
- 出版社側は、オープンAIが著作権を有するニュース記事を含むChatGPTログおよび学習データを検索できる能力を、2年以上にわたり隠してきたと主張。
- 原告が求めた1億2,000万件に対し、2,000万件のログサンプルしか提出されず、その扱いとログの大量削除が問題視されている。
- オープンAIは全面的に否定し、出版社側は利用者プライバシーへの「侵入」を狙っていると反論。
オープンAIによる証拠隠し疑惑
制裁申立書は7月9日、マンハッタンの連邦地裁に提出された。原告にはニューヨーク・デイリーニューズ、Ziff Davis、Center for Investigative Reportingも名を連ねる。申立書によれば、オープンAIは自社システム上でニュース記事の著作物を検索する能力について、2年以上にわたり誤った説明を続けてきたとされる。
訴訟の過程で、同社は学習コーパスを検索することはできないと主張。加えて、ChatGPTの利用ログを提出することは過度な負担であり、ユーザーのプライバシーを損なうと繰り返してきた。
しかしこの立場は4月、プライバシーエンジニアのヴィンセント・モナコ氏が証言録取手続きで、オープンAIがすでに社内で同様の検索を行っていたと明らかにしたことで揺らいだ。証言によれば、同社は訴訟提起前の段階で、匿名化された約7800万件の会話ログを収集し、ニュースコンテンツの有無をスクリーニングしていたという。
出版社側によれば、その事実は一切開示されないまま、原告は2,000万件分のログサンプル(当初請求した1億2,000万件のごく一部)と格闘させられ、その多くが黒塗り状態だったという。裁判所はこのサンプルを「利用に耐えない」と判断しており、申立書はさらに、既に保存命令が出ていたにもかかわらず、オープンAIが数十億件規模の会話ログを削除したと非難している。
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出版社側が求める「極めて重い」制裁
原告側は、オープンAIが提出した2,000万件のログサンプルを公判での証拠から除外するよう求めている。あわせて、裁判所に対し「ChatGPTの生成物には原告の記事の実質的な複製が含まれていた」との事実認定を行い、それに反する主張を一切禁じるよう要請している。弁護士費用の支払いと、削除されたログについて陪審に説明するための特別な司法指示も救済として求める。
原告側の主任弁護士イアン・クロスビー氏は、オープンAIは「タイムズ、デイリーニューズの原告、一般市民、そして裁判所に対し嘘をつき、既に実行していた検索作業を隠した」と批判。デイリーニューズ側の弁護士スティーブン・リーバーマン氏も、同社は「ChatGPTが盗用したジャーナリズムでどのように学習したかを示す証拠を隠し、破壊した」と非難した。
これに対し、オープンAIの広報担当者ドリュー・プサテリ氏は、出版社側の主張を「明白に事実無根」と一蹴し、「ユーザーのプライバシーと、長年確立されてきたフェアユースの原則を引き続き守っていく」と述べた。
タイムズは2023年12月、マイクロソフトとオープンAIを提訴し、両社が数百万本におよぶ自社記事を無断で利用し、代替性の高い製品を構築したと主張している。同社はAI企業との法廷闘争にこれまで2,800万ドル超を投じており、その中にはPerplexityを相手取った別件訴訟も含まれる。一方、Anthropicは昨年、著者らとの間で海賊版電子書籍を巡り15億ドルで和解に応じており、現時点でAI著作権訴訟としては最大規模の和解金となっている。





