コインベース(Coinbase)の2024年第2四半期決算は木曜の米市場終了後に公表されたが、市場の評価はわずか数十秒で下された。時間外取引でCOIN株は約5%安の154ドル前後まで売り込まれた。売上高がストリートのコンセンサス予想を軒並み下回ったためだ。
アナリストが事前に「数字を入れていた」水準(Wall Street had penciled in.)をいずれも割り込んだ格好だ。
売上高は12億2,000万ドルと、市場予想の約12億9,000万ドルに届かず。前年同期比では18.5%減、前四半期比でも14%減と二桁減収となった。
1株当たり損益(GAAPベース)は1.36ドルの赤字と、アナリスト予想の約0.42ドルの赤字を大幅に下回る内容。詳細な決算資料は同社のIRサイトで公表されている。
どこで収益が消えたのか
最大のブレーキとなったのは取引関連収入だ。トランザクション収入は5億9,900万ドルと、想定以上に落ち込んだ。
個人投資家のトレーディング収入は4億5,200万ドルと前期比20%減。機関投資家向けは1億ドルと26%減少し、インスタント送金や同社L2「Base」のアクティビティ減少も響き、その他トランザクション収入は4,700万ドルにとどまった。
下支え役と見込まれていたサブスクリプション&サービス収入も力不足だった。第2四半期の同収入は5億5,500万ドルと、市場予想の5億9,900万ドル前後には届かず。内訳は、ステーブルコイン関連収入が2億9,200万ドル、ブロックチェーン報酬が8,300万ドル、金利・手数料収入が6,600万ドルなどとなっている。
最高財務責任者(CFO)の**アリーシア・ハース(Alesia Haas)**氏は、期中に予定していたオンプラットフォームのUSDC取引が想定より後ろ倒しになったこと、暗号資産価格の下落でステーキング報酬が押し下げられたことが予想未達の主因だと説明した。
さらに厳しかったのは見通しだ。コインベースは第3四半期のサブスクリプション&サービス収入を5億~5億8,000万ドルとガイダンスしたが、アナリストが見込んでいた約6億3,400万ドルを大きく下回るレンジにとどまった。
第2四半期決算は「過去」のミスだが、ガイダンスは「未来」の下方修正であり、時間外で株価を動かす材料になりやすい。
なぜ過去最高のシェアでも救われなかったのか
弱気派にとってやや厄介なのは、オペレーション面ではコインベースが成果を上げていた点だ。スポット取引ボリュームのシェアは10.3%と過去最高を更新し、3四半期連続でシェアを伸ばした。デリバティブ取引のボリュームも横ばいを維持しており、市場全体のボリュームが12%縮小する中でシェアを奪ったことになる。
ただし、土台となる市場環境そのものが冷え込んでいた。業界全体のスポットボリュームは2割超減少し、暗号資産の時価総額は二桁の減少、ボラティリティは数年ぶりの低水準まで圧縮された。ボラティリティは、手数料収入を生み出す取引所ビジネスの「原材料」にほかならない。
コスト管理でも一定の成果が見られる。5月の人員削減を受け、第2四半期の調整後費用は10億ドルと前期比9%減。調整後EBITDAは2億800万ドルと14四半期連続で黒字を維持した。バランスシート上の現金は86億ドル、総リソースは100億ドルに達し、13億ドル相当の転換社債を返済済みだ。
また、年初からこれまでに約700万株、自社株買い総額で12億ドル相当を消却済みとしている。
不振決算の裏で打ち出された「AiFi」構想
その一方で、**ブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)**CEOが決算説明の大半を費やしたのは、足元ではほとんど収益を生んでいないテーマだった。
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彼が「AiFi」と呼ぶのは「エージェンティック・ファイナンス(agentic finance)」の略だ。近い将来、ソフトウェアエージェントの数は人間を上回り、互いにコンピューティングリソースやデータ、サービスの対価を支払うようになるが、人間のように銀行口座を開設することはできない——というのが基本シナリオである。
そのための配管はすでにコインベース内部に存在するという。新たに打ち出した「x402」プロトコルは、休眠状態だったHTTPステータスコードを再活用し、機械がペイウォール付きエンドポイントにアクセスした際、その場でステーブルコイン決済を完了できる仕組みだ。決済レイヤーはL2ネットワークのBaseが担い、単位となる通貨はUSDC(USDC)、エージェント向けウォレットは「Coinbase for Agents」が提供する。
アームストロング氏は、オンチェーン上で行われるエージェント同士のコマースの「圧倒的多数」がすでにこのスタック経由で処理されていると主張する。
足元の数字にも一定の裏付けはある。コインベース上のプロダクトに保有されるUSDC平均残高は過去最高の200億ドルとなり、前年同期比で44%増加。予測市場関連の契約数と収入は前期比で倍増し、借入・貸出残高は10億ドル増の15億ドルへ積み上がった。ネット収益の88%は、すでにビットコインの現物取引以外から生み出されている。
コインベース自身も「モデル駆動」に
もう一つのAIストーリーは社内向けだ。アームストロング氏によれば、エンジニア1人当たりのプルリクエスト数は前年同期比で2.2倍、テストカバレッジは2.5倍に拡大した。一方で、推論コストの増加は利用量の増加に比べて抑えられており、オープンウェイトモデルへの移行で効率化が進んでいるという。
これを5月の人員削減と合わせて読むと、輪郭がはっきりする。より少ない人数でより多くのソフトウェアを出荷できる企業は、景気後退局面でも費用ベースを横ばいに維持しやすい。実際、同社が示した年間調整後費用ガイダンスは420億~445億ドルと、コスト横ばいシナリオを前提にしている。
Coinbase Q2決算後の注目ポイント
第3四半期のトランザクション収入は、7月26日までの累計で約1億3,000万ドルに達しており、現状のランレートから今後を推計することはできる。
事業ポートフォリオの中核となったUSDCについては、**サークル(Circle)**との提携が8月に現行条件のまま自動更新される予定で、事実上ビジネスの半分を占めるUSDC経済圏の収益性は当面守られる。
残された論点は、AIエージェントによる決済ボリュームが、次のマーケットサイクルが本格化する前にどこまで手数料収入に変換されるかだ。今回の第2四半期決算は、依然として暗号資産価格動向がコインベースの業績を左右している現実を改めて示したと言える。





