暗号資産市場のレバレッジは2020年以来の低水準まで落ち込んでいる。もっとも、Galaxy Researchのデータによれば、 22年の相場崩壊時のような強制ロスカットやカウンターパーティー破綻を伴うショックではなく、 比較的コントロールされた「負債圧縮」として進行している点が特徴だ。
Galaxyによると、暗号資産を担保とした融資残高は2026年4〜6月期(第2四半期)に113億ドル減少し、 借り入れ活動の縮小は3四半期連続となった。中央集権型レンディング、分散型プロトコル、デリバティブ市場をまたぐ 総レバレッジは、新型コロナ禍の流動性ブーム以前の水準へと押し戻されつつある。
システミックショックなきデレバレッジ
今回のデレバレッジ局面が過去と大きく異なるのは、「システミックな失敗」が見当たらない点だ。
2022年には、Three Arrows Capital、Celsius Network、Genesisの破綻が暗号資産クレジット市場に連鎖的な打撃を与えた。 一方で、8月17日付で公表されたGalaxyのレポートは、2026年前半について「大規模なカウンターパーティー破綻は確認されていない」 と指摘。清算(ロスカット)ボリュームも、危機期と比べれば大幅に低い水準にとどまっている。
これは、借り手がポジションを「一斉撤退」ではなく、時間をかけて圧縮していることを示唆する。 レポートは、デレバレッジの主因として、貸出期間満了、利用率の低下、レバレッジ取引の採算悪化などを挙げており、 パニック売りやマージンコールの連鎖といった要因は前面には出ていない。
DeFiレンディングの縮小ペースはCeFiを上回る
分散型金融(DeFi)のレンディングは、中央集権型(CeFi)の暗号資産クレジットよりも速いペースで萎んでいる。 Aave(AAVE)、Compound(COMP)、 Morpho(MORPHO)など主要DeFiレンディングプロトコルにロックされている 総資産(TVL)は、2026年1〜6月の半年間で約28%減少した。
ボラティリティ低下でレバレッジをかけた利回り追求戦略の妙味が薄れたことから、借り手側の需要が縮小。 同時に、利回りの低下を嫌った流動性供給者も資金を引き上げたことで、残高の縮小に拍車がかかった。
ステーブルコインの貸出・借入金利も同じ傾向だ。Aave V3におけるUSDC(USDC)の 借入金利は、2024年11月の9.2%から2026年6月には3.8%へ低下。中央集権型プラットフォームにおけるUSDT利回りも、 強気相場時の高水準から大きく押し下げられている。
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デリバティブ市場でもレバレッジ後退
永続先物(パーペチュアル)市場も冷え込みが鮮明だ。主要取引所のオープンインタレスト(未決済建玉)は、 2024年1月のビットコイン現物ETF承認前の水準まで低下。アルトコインの永続先物建玉に至っては、 2024年11月のピークからおよそ60%縮小した。
主要取引所における資金調達率(ファンディングレート)もゼロ近辺か、わずかにマイナス圏で推移しており、 レバレッジをかけたロングポジションによる投機熱は明確に後退している。
背景には、ビットコインの低ボラティリティがある。値動きが乏しい環境ではレバレッジ戦略の期待リターンが細り、 一部トレーダーはビットコインや主要アルトではなく、より値動きの大きいトークンやテーマ株的な銘柄へと リスクを取りに行っている。
「レバレッジの底」が次の上昇相場を形づくる可能性
Galaxyのデータは、必ずしも本格的な弱気相場入りを示すものではない。むしろ、投機的な負債を大きく削減しながらも、 信用危機を回避している市場像を描いている。
過去を振り返ると、2015〜16年、2019〜20年にかけての「レバレッジリセット」の後には、 ビットコインの大型上昇相場が到来した。レバレッジが低い局面では、新規マネーの流入が価格に与えるインパクトが 大きくなりやすいためだ。
レポートは、足元の暗号資産市場が「レバレッジのピーク」というよりも「レバレッジのボトム」に近づきつつある可能性を 示唆している。低レバレッジ環境が必ずしも上昇相場を約束するわけではないが、 過去サイクルのピーク時に見られたような、脆弱なバランスの上に積み上がった相場とは異なる リスク構造にあることは確かだ。





