**サークル(Circle)**が発行するステーブルコイン USDコイン(USD Coin)(USDC)が、新興・途上国市場に本格進出する。ジェレミー・アレールCEOは、USDCを今後およそ40カ国で展開する計画を明らかにし、ブロックチェーン活用が「早期採用段階から本格普及フェーズへ移行しつつある」との見方を示した。
主なポイント
- 東南アジア、中南米、アフリカ、中東など約40市場への展開を計画
- USDCの流通残高は前年同期比19%増の733億ドル
- 2027年1月施行予定のGENIUS法で「合法的なデジタルドル」が誕生すると予測
40市場への「一斉展開」
アレール氏は、ロイターの取材に対し、東南アジア、中南米、アフリカ、中東など新興・途上国でUSDCの本格展開に踏み切ると説明した。場所はタイ・バンコクで開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会の傍らだ。
同氏は「今、潮目が変わりつつある」と述べ、これまで一部の先進的ユーザーに限られていたブロックチェーン利用が、決済や送金など実需ベースで拡大し始めていると指摘。特に新興国では、通貨不安や高インフレ、高コストな国際送金などを背景に、個人・企業ともにステーブルコイン需要が自然発生的に高まっているという。
USDCの流通残高は第2四半期時点で733億ドルと、1年前から19%増加した。ただし、時価総額で最大手のライバルにはまだ水をあけられている。
サークルの世界シェアはおよそ25%に対し、**テザー(Tether)**が発行するUSDTは約60%を占めるとされ、USDCは依然として「2番手」の位置づけだ。
足元では大手銀行や決済企業が、国際送金・決済インフラとしてステーブルコインを本格導入する動きも出ている。サークルのArcネットワークはすでにブラックロック(BlackRock)、ビザ(Visa)、**スタンダードチャータード銀行(Standard Chartered)**などをユーザーに抱えており、実運用フェーズへの移行が進みつつある。
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規制を追い風に アレール氏の「デジタルドル」構想
アレール氏は今回の新興国展開を、規制環境の変化と強く結びついた動きだと位置づける。2027年1月にGENIUS法(GENIUS Act)が施行されれば、「世界は合法的なデジタルドルを持つことになる」と語り、この転換点を「歴史的な分岐」と表現した。
米国や欧州では、銀行グループが自前のステーブルコイン発行を模索するケースも増えている。アレール氏は、こうした動きを「健全で競争的な市場が形成されつつある証左」と評価し、「イノベーターの時代が来ている」と述べた。
さらに同氏は、AIエージェント同士がウェブ検索やリアルタイムデータ取得のために1セント未満の少額支払いを頻繁に行うといった、新しいマイクロペイメント需要がUSDC利用を押し上げていると説明する一方、AIの進展は新たなセキュリティリスクも伴うと警鐘を鳴らした。
サークルは2026年7月、ステーブルコイン発行体として初めて米連邦レベルの銀行免許を取得した一社となった。ある市場分析では、このステータスが「銀行によるUSDCの実決済利用を後押しする可能性がある」と指摘されている。
相次ぐ提携と買収 攻勢強めるサークル
バンコクでの発言は、ここ数カ月にわたるサークルの攻勢を総括する格好となった。
9月8日には、同社がシンガポール拠点の決済企業Tazapayの買収に合意したと発表。総額4億ドルの株式交換による買収で、シンガポール金融管理局(MAS)の承認を前提に、2027年の取引完了を見込む。
その2週間後には、大手暗号資産取引所**バイナンス(Binance)**がサークルに1億ドルを出資し、向こう5年間にわたり新興国市場を中心にUSDCの普及を共同で推進する戦略的パートナーシップを結んだと公表している。
ステーブルコインの主導権争いが激しさを増すなか、USDCが新興・途上国40カ国でどこまで存在感を高め、テザーにどこまで迫れるのか。2027年のGENIUS法施行と合わせ、市場の注目が集まっている。

