米パロアルト発 2026年10月12日(Chainwire)
2億5,000万件超の検証可能なレシートを保有するオンチェーンAI学習データ登録台帳「Trace」が、次世代AIモデル向けにSuiおよびWalrus上で学習データ供給を開始する。
Sui Foundation と DATA Foundation は12日、DATA Networkとその登録台帳であるTraceがSuiスタックへ統合されると発表した。これにより、権利処理済みのAI学習データが、AIワークロード向けにSuiが構築してきたインフラ上でリアルタイムに供給可能となる。また、Suiに検証可能なインテグリティ証明をアンカーするデータプラットフォームWalrusが、DATA Foundationが運営するアプリケーションにおける標準ストレージレイヤーとなる。さらに、DATA Network自体もSui上でネイティブに稼働するプロトコルへアップグレードされる予定だ。
今回のアップグレードにより、AIラボは、利用許諾が明確な実世界データを単一の場所から調達できるようになる。データの来歴と権利関係はTraceがオンチェーンで記録し、オリジナルのファイルはWalrus上に保管され、アクセス制御が行われる。
AIが次に必要とするデータ
次世代のAIモデルは、実世界データへのアクセス制約によって成長が頭打ちになりつつある。公開ウェブはすでにクローリングし尽くされ、今後必要とされるデータは、個人から同意に基づき調達し、その出所と権利関係が規制当局や法務部門に受け入れられる形で証明できなければならない。EU AI規則(EU AI Act)や学習データを巡る訴訟の広がりを受け、データの来歴証明はAIラボにとって調達要件となっている。
こうしたモデルが求めるデータは、もはやオープンウェブではなく、人々の手元に存在している。看護師が夜間の患者の様子を自分の言葉で記録したメモ、ジャカルタの雨の通勤風景を映したドライブレコーダー映像、工場技術者が故障診断する手元の動画、あるいはベンガル語でのコールセンター対応の録音などだ。これらはきわめてパーソナルで多くは規制対象でもあり、その権利はデータを生み出した本人に帰属する。
DATA Foundationが6月に立ち上げたTraceは、こうしたデータを想定して設計されたオンチェーンのAI学習データ登録台帳である。各データ提供の出所と付随する権利を記録し、対価をデータ提供者に決済する仕組みを備える。ローンチ以降、登録済みのデータ提供は2億5,000万件を超え、現在は1日平均300万件超のレシートを処理している。Traceに書き込むアプリケーションには、15億件超のオプトイン人間データをオンボーディング中の最大級のデータマーケットプレイスKledのほか、すでに先端AIラボやロボティクス企業向けにデータライセンスを行うNumoやOtoなどが含まれる。
SuiとWalrusを選んだ理由
Suiはすべてのアセットを「プログラム可能なオブジェクト」として表現する設計を採用しており、データセットとそのライセンスをトークン同様にオンチェーンで管理できる。独立したトランザクションは並列実行され、1秒未満でファイナリティに達するため、日次で数百万件規模の登録処理にも対応可能だ。Walrusはこの能力を大容量ファイルに拡張する。巨大なAIデータセットを効率的に保存し、ライセンスを受けた購買者のみが読み取り可能となるアクセス制御を行う。他に類例のない点は、ストレージ、アクセスコントロール、所有権トラッキング、そして検証可能なコンピュートが、一つのエコシステム内でネイティブに統合されていることだ。
Traceは今回、権利クリアなデータの旗艦的な供給源としてSui/Walrusに乗り込み、すでに同データをライセンス利用するAIラボからの需要も伴っている。統合の結果として、来歴保証は一段と強化され、改ざん検知能力も向上する。現時点でもTraceの記録によって、いつどのファイルが登録されたかを証明できるが、Walrusとの統合により、Traceは貢献ファイルの暗号化された不変コピーそのものを「参照保証」として保持できるようになる。これにより、ハッシュはアプリケーションが供給したメタデータではなく、データ本体から再計算でき、後続処理との整合性も原本と照合可能となる。
このアップグレードは、長期的な戦略投資で裏打ちされている。Sui FoundationはDATA Networkに3,000万ドルを出資し、PIP LabsおよびDATA Foundationが引き続き保有するトークンと並ぶ形で、ネットワーク最大の機関投資家としてのポジションを確立する。またアライメント強化の一環として、Poseidon会長兼PIP Labs CEOのSY Lee氏が、Sui Foundationの戦略アドバイザーに就任する。
プロトコルアップグレードの概要
DATA NetworkはSui上でネイティブに動作するプロトコルへとアップグレードされ、現在の独立チェーンは段階的に廃止される。$DATAトークンはSui上のDATAプロトコルのネイティブトークンとして1:1で引き継がれ、トークンホルダーの経済的インセンティブおよびガバナンス権は、少なくとも現状と同等以上が維持される。ロック中やベスティング中のポジションも条件を変えずに移行される。並行して、WalrusはDATA Foundationが運営するアプリケーションの標準ストレージレイヤーとなる。
> Mysten Labs 共同創業者 兼 CPO(SuiおよびWalrusのオリジナル開発元)
> Adeniyi Abiodun氏のコメント:
> 「AI業界はすでにオープンインターネットを読み尽くし、次のフロンティアは、規制当局が求める同意と来歴証明を備えたデータセットへのアクセスによって定義されつつあります。SuiとWalrusは、AIデータが保存され、ライセンスされ、対価が支払われる“ホーム”として、これらのシステムが必要とするスケールで稼働できるよう設計されました。今回、DATA NetworkとTraceが我々のスタックに移行することで、既に世界のフロンティアAIラボに提供されている、高品質で権利クリアな膨大なデータが流れ込むことになります。」
> Poseidon会長 兼 PIP Labs CEO
> SY Lee氏のコメント:
> 「次世代AIは、オープンウェブではなく、人々の手元にあるデータで学習されるようになります。こうしたデータには、同意と来歴証明、それに加えて、データの出所となる人々へ対価を還元する仕組みが組み込まれていなければなりません。Traceはまさにそのレイヤーとして構築されました。今回、TraceはWalrusと並んでSuiスタックの一部となり、業界屈指のエンジニアリング組織の支援と、ネットワーク最大の戦略的ホルダーとしてのSui Foundationの支えを得ることになります。私たちが構築してきたネットワークにとって、これ以上ない“ホーム”であり、SuiがAIのためのデータレイヤーになるプロセスを支援できることを楽しみにしています。」
> DATA Foundation CEO
> Andrea Muttoni氏のコメント:
> 「トレーニングデータはAIフロンティアを押し広げ続けるうえで不可欠であり、そのトレーサビリティ、監査可能性、利用許諾の明確性を確保することは、データ品質の前提であると同時に、AIセーフティの観点からもきわめて重要です。Traceを通じ、私たちは数億件規模のデータアセットを追跡してきました。Suiとの連携により、単なる監査証跡を超えたスタックの拡充が可能になります。たとえば暗号化された参照ファイルストレージや、将来的には評価・ファインチューニング向けの完全検証可能なTEEなども視野に入っています。」
既存のDATA Networkは、アップグレード完了まで現在どおり稼働を続ける。アップグレード前には、詳細なスケジュールとトークンホルダー向け移行計画が公表される予定だ。
DATA Foundationについて
DATA Foundationは、AIモデルが必要とする実世界データの来歴を追跡するプロトコル、DATA Networkを支える組織である。Traceを通じて、各データ提供は来歴レシートと完全な監査証跡とともに登録される。ネットワーク上には、Kled、Numo、Otoなど複数のアプリケーションが構築されている。同財団は旧Story Foundationであり、2026年6月にAI学習データへとフォーカスを転換した。現在、DATA NetworkはSui上で稼働するプロトコルへアップグレード中だ。
Suiについて
Suiは、「お金がメッセージと同じように自由に動く世界」を掲げる次世代レイヤー1ブロックチェーンであり、オンチェーン・ファイナンスとエージェント型インフラ向けに構築されている。Metaのステーブルコイン構想の中核チームによって設立され、オブジェクト中心のモデルによってアセット、権限、ユーザーデータをプログラム可能かつ検証可能な形で扱う。Suiのプリミティブは、高性能な金融アプリケーションおよびAIネイティブなアプリケーション構築に必要な要素を一通り備える。詳しくは sui.io を参照。
Walrusについて
Walrusは、AIが要求する水準のデータマネジメントに特化して設計されたデータプラットフォームである。ビルダー、企業、AIエージェントが、アプリやモデル間でデータを移動させ、組み込みのアクセスルールで保護し、誰もが検証可能な形で扱えるようにする。AIが現実世界で結果を伴う行動を取るようになるにつれ、その基盤となるデータには「証明可能性」が求められる。Walrusは、SuiおよびMeta初のステーブルコイン構想を手掛けた暗号・分散システムエンジニアによって開発された。walrus.xyz
メディア問い合わせ先
DATA Foundation: [email protected]
Sui Foundation: [email protected]
連絡先
コミュニケーション責任者
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DATA Foundation
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