イーロン・マスク氏はテスラとスペースXの統合について「排除しない」と発言した。 23日の決算説明会での一言を受け、あるアナリストは統合実現の確率を一気に9割まで引き上げた。
とはいえ、テスラを買収する「通貨」となるスペースX株は、6月の高値からおよそ5割下落。 相場変動に応じて、想定される交換比率は日々書き換えられている。
主なポイント
- アナリストの多くはスペースXを買い手とする株式交換による統合を想定し、RBCはテスラ株主向けプレミアムを20〜30%と試算。
- スペースX株が動くたびに新たに発行すべき株数が変わるため、株価下落は既存株主にとって「割高な買収」になりやすい。
- 直近1年間のスペースXの損失はテスラの利益を上回っており、統合企業は当初から赤字スタートとなる公算が大きい。
「オール株式交換」が既定路線 RBCはテスラに2〜3割プレミアム観測
ウォール街では、両社の取引スキームの方向性はすでにおおむね固まっている。 RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、トム・ナラヤン氏は、 リポートで 「テスラ株主は20〜30%のプレミアムを株式交換で受け取る」と試算。 経営支配権の移譲への対価と位置づけ、テスラ株の目標株価を500ドルに引き上げた。
JPモルガンのアナリスト、ダグ・アンマス氏も「株式交換が最有力」と分析。 新たな持株会社を設立する方法や段階的な統合作業などを、代替案として挙げた。
同行は別のレポートで、中国工場を抱えるテスラにとって 中国当局の承認が最大の実務的ハードルになると指摘している。
統合条件を左右するのは戦略よりも株価だ。 例えばスペースX株が135ドルの時点では、テスラ買収には発行済み株数の46%に相当する 追加発行が必要だったが、株価が185ドルまで上昇すると必要な増資比率は38%まで縮小していた。
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統合会社は赤字発進 マスク氏の議決権は5割超も
しかし現在は、その前提が逆回転している。 スペースX株は公開価格を割り込み、再び買収コストを押し上げる方向に振れているためだ。 スペースX既存株主の持ち株比率は、単独上場時の100%から3分の2を切る水準まで希薄化する一方、 統合後のマスク氏の議決権は5割超に達する可能性がある。
マスク氏は現在、スペースXでは約85%の議決権を握るのに対し、 テスラでの議決権は約20%にとどまる。この差が、統合スキームをめぐる主導権の行方を決定づける。
統合後の収益面の課題はさらに重い。 直近4四半期のスペースXの累積損失はテスラの利益を上回っており、 時価総額で「兆ドル級」とも目される統合企業は、スタート時点から最終赤字となる見通しだ。
そもそも買い手であるスペースXのバリュエーション自体が定まっていない。 レイモンド・ジェームズはスペースX株の目標株価を800ドルとする一方、 モーニングスターは適正価値を62ドル近辺と算定。 モルガン・スタンレーは、フリーキャッシュフローが黒字化するのは2035年以降とみている。 年内に予定されるロックアップ解除で新たな売り出し株が市場に流入すれば、 価格発見プロセスは一段と混迷を深めそうだ。
テスラ決算もスペースX株で振らされる構図
両社の関係は、現時点でもすでに「一体運命共同体」に近い。 テスラは第2四半期決算で、保有するスペースX株の評価益として10億ドルを 計上した。 一方で、ビットコイン (BTC)では約1億ドルの評価損を出している。
スペースX株の評価益は6月30日時点の株価で算定されたもので、 その後の株価反落を踏まえると、次期には逆回転の可能性が高い。 仮に両社が統合されれば、テスラがスペースX株を保有する構図は解消され、 こうした評価益・評価損は連結上、相殺されることになる。
スペースX株価は、上場直後の上昇分をすでに帳消しにした。 6月12日の公開価格は135ドルで、初値は150ドル。 その後は数日のうちに225ドル超まで駆け上がったが、 反落局面では115ドル割れとなり、現在は110.85ドルと上場来安値圏に沈む。





